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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
一 典獄の訓誨
伊勢へは我々一年半の刑を受けし人のみにて、十数人の同行者あり。常ならば東海道の五十三駅詩にもなるべき景色ならんに、柿色の筒袖に腰縄さえ付きて、巡査に護送せらるる身は、われながら興さめて、駄句だに出でず、剰え大阪より附き添い来りし巡査は皆草津にて交代となりければ、切めてもの顔馴染もなくなりて、憂きが中に三重県津市の監獄に着く。到着せしは黄昏の頃なりしが、典獄は兼ねて報知に接し居たりと見え、特に出勤して、一同を控所に呼び集め、今も忘れやらざる大声にて、「拙者は当典獄平松宜棟である、おまえさん方は、今回大阪監獄署より当所に伝逓に相成りたる被告人らである、当典獄の配下の許に来りし上は申すまでもなく能く獄則を遵守し、一日も早く恩典に浴して、自由の身となるよう致せ、ついてはその方らの身分職業姓名を申し立てよ」と、一同をして名乗らしめ、さて妾の番になりし時、「お前はいわんでも分る、景山英であろう、妙齢の身にしてかかる大事を企て、今拙者の前にこうしていようとは、お前の両親も知らぬであろう、アア今頃は何処にどうしているだろうと、暑いにつけ、寒いにつけお前の事を心配しているに相違ない、お前も親を思わぬではなかろう、一朝国のためと思い誤ったが身の不幸、さぞや両親を思うであろう、国に忠なる者は親にも孝でなくてはならんはずじゃ