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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

四 神頼み

五 有形無形

四 神頼み

しかるに生れて二月とはたたざる内に、小児は毛細気管支炎という難病にかかり、とかくする中、危篤の有様に陥りければ、苦しき時の神頼みとやら、夫婦は愚にかえりて、風の日も雨の日も厭うことなく、住居を離る十町ばかりの築土八幡宮に参詣して、愛児の病気を救わせ給えと祷り、平生嗜める食物娯楽をさえに断ちたるに、それがためとにはあらざるべけれど、それよりは漸次快方に赴きければ、単に神の賜物なりとて、夫婦とも感謝の意を表し、その後久しく参詣を怠らざりき。

五 有形無形

妾幼より芝居寄席に至るを好み、また最も浄瑠璃を嗜めり。されどこの病児を産みてよりは、全くその楽しみを捨てたるに、福田は気の毒がりて、機に触れては勧め誘いたれど、既に無形の娯楽を得たり、復た形骸を要せずと辞みて応ぜず。ただわが家庭を如何にして安穏に経過せしめんかと心はそれのみに奔りて、苦悶の中に日を送りつつも、福田の苦心を思いやりて共に力を協せ、僅かに職を得たりと喜べば、忽ち郷里に帰るの事情起る等にて、彼が身心の過労一方ならず、彼やこれやの間に、可借壮健の身を屈托せしめて、なすこともなく日を送ることの心許なさ。