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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

第十四 大覚悟

第十四 大覚悟

アア人生の悲しみは最愛の良人に先立たるるより甚だしきはなかるべし。妾も一旦は悲痛の余り墨染の衣をも着けんかと思いしかど、福田実家の冷酷なる、亡夫の存生中より、既にその意の得ざる処置多く、病中の費用を調うるを名として、別家の際、分与したる田畑をば親族の名に書き換え、即ちこれに売り渡したる体に持て做して、その実は再び本家の有となしたるなど、少しも油断なりがたく、彼の死後は殊更遺族の饑餓をも顧みず、一列投げやりの有様なれば、今は子らに対して独り重任を負える身の、自ら世を捨て、呑気の生涯を送るべきに非ずと思い返し、亡夫の家を守りて、その日の糊口に苦しみ居たるを、友人知己は見るに忍びず、わざわざ実家に舅姑を訪いて遺族の手当てを請求しけるに、彼らは少しの同情もなく、漸く若干の小遣い銭を送らんと約しぬ。かかる有様なれば、妾は嬰児を哺育するの外、なお二児の教育の忽せになしがたきさえありて、苦悶懊悩の裡に日を送る中、神経衰弱にかかりて、臥褥の日多く、医師より心を転ぜよ、しからざれば、健全に復しがたからんなどの注意さえ受くるに至りぬ。死はむしろ幸いならん、ただ子らのなお幼くして、妾もしあらずば、如何になり行くらん。