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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

に至りしを思い、かかる私欲の充ちたる人にして、如何で大事を成し得んと大いに反省する所あり、さてこそ長崎において永別の書をば葉石に贈りしなれ。しかるに今公判開廷の報に接しては、さきに一旦の感情に駆られて、葉石に宛てたりし永別の書が、端なくも世に発表せられしことを思いてわれながら面目なく、また葉石に対し何となく気の毒なる情も起り、葉石にしてもしこの書を見ば、定めて良心に恥じ入りたらん、妾の軽率を憤りもしたらん、妾は余りに一徹なりき、彼が皎潔の愛を汚し、神聖なる恋を蹂躙せしをば、如何にしても黙止しがたく、もはや一週間内にて、死する身なれば、この胸中に思うだけをば、遺憾なく言い遺し置かんとの覚悟にて、かの書翰は認めしなれば、義気ある人、涙ある人もしこれを読まば、必ず一掬同情の涙に咽ぶべきなれど、葉石はそもこれを何とか見るらん、思えば法廷にて彼に面会することの気の毒さよ。彼はこの書翰のために、有志の面目をも損ずるなるべし、威厳をも傷うなるべし、さても気の毒の至りなるかな。妾とても再び彼ら同志に逢わざるべきを、予想したればこそ、かく夫婦の契約あることを発表せしなれ、今日の境遇あるを予知せば、もはや愛の冷却せる者に向かいて、強いて旧事を発表し、相互の不利益を醸すが如き、愚をばなさざりしならんに。