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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
三 久し振りの帰郷
実に人の最も変化するは十三歳頃より十七、八歳の頃にぞある、見違えしも宜ならずやなど笑い興じて、共に腕車に打ち乗り、岡山有志家の催しにかかる慰労の宴に臨まんため、岡山公園なる観楓閣指して出立つ。
この公園は旧三十五万石を領せる池田侯爵の後園にして、四時の眺め尽せぬ日本三公園の一なり。宴の発企者は岡山屈指の富豪野崎氏その他知名の諸氏にしてわれわれおよび父母親戚を招待せられ、席上諸氏の演説あり、また有名の楽師を招きて、「自由の歌」と題せる慷慨悲壮の新体詩をば、二面の洋琴に和して歌わしむ。これを聴ける時、妾は思わず手を扼して、アアこの自由のためならば、死するもなどか惜しまんなど、無量の感に撃たれたり。唱歌終りて葉石の答礼あり、それより酒宴は開かれ、各歓を尽して帰路につきたるは、頓て点燈頃なりき。
三 久し振りの帰郷
かくて妾は母、兄弟らに護られつつ、絶えて久しき故郷の家に帰る。想えばここを去りし時の淋しく悲しかりしに引き換えて、今は多くの人々に附き纏われ、賑々しくも帰れることよ。今昔の感坐ろに湧きて、幼児の時や、友達の事など夢の如く幻の如く、はては走馬燈の如くにぞ胸に往き来う。