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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

半之助はちょっと息をのんだ。主馬の右脇にいる小男は、見たことがある、やはり丸茂で会ったみじん流の剣術の達者だという、たしか次高来太という男にちがいない。

「どうしたんだ、青山」

「なんだかわからない、大目付へすぐ出頭しろというんだ」

「用件はなんだ」

「記録書類がどうとかいうんだが、詳しいことは此処では云えないそうだ」

「おかしいじゃないか」

こう半之助が云いかけると、次高来太という男が前へ出て来た。

「貴方は黙っていたほうがいい、自分に関係のないことには口だしをしないことだ」

「ではそっちはどうだ」

半之助は遮って云った。

「いつか丸茂という家で、この顔を覚えておけと云った、みじん流の次高なにがしとかいうそうだが、大目付とどんな関係があるんだ」

「それが気になるかね」

短くて太い眉が、ぴくっとあがり、色の黒い顔が醜く歪んだ。

「よして呉れ、安倍」主馬が手を振った、「私はいって来るよ、大丈夫だ、いけばわかるだろうし、決して心配はない」

「しかし大目付からの召状はあるのか」

「特に口上で、ということなのです」前にいた一人が云った、「表沙汰にはしない、という意味らしいんですが」