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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

などと云った。なかの一人は望月内記といい、大目付の記録所の支配だそうであるが、自分のほうに近く空席ができるから、折をみて推挙するつもりでいる。というふうなことを仄めかした。半之助は当らず触らずの挨拶をし、手があくとすぐに、友達なかまのほうへ引込んだ。

「なに者だい、あの爺さんは」

重兵衛が早速こう訊いた。

「まるでこの法事の周旋人みたようじゃないか、主人公そっちのけじゃないか、いかなる人物かね」

「つまり今日の主人公さ」

半之助はそう答えながら、冲左衛門が、これらの客を家の接待にもつれてゆき、ことによると佐枝をも、彼と並べてひきあわせるのではないか、ということを想像し、これはどうしたってぬけださなければならない、と思った。

「松室に会えたのか」

「会えたよ、もう少したってから来る筈だ」

重兵衛がそう答えかけたとき、「ごぶさた致しました」と云いながら、半之助のそばへ来て坐った者があった。半之助にはちょっと誰だかわからなかった。

その若者は半之助より一つ二つ若く、躯も顔も痩せてほそかった。薄くて色の白い膚は、神経がぴりぴり震えているようだし、際立ってするどい、敏感そうな眼鼻だちをしていた。