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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

そのとき、まるで彼の軽侮に答えるかのように、庭のほうから、矢が一筋、空を切って飛んで来、するどい音をたてて、天床に突刺さった。二人ははっと片膝を立て、突刺さったまま震えている、天床の矢を見あげた。

「――なるほどね」

半之助が云った。

「――かれらは、なにも知らないらしいな」

「知る筈がないんだ」

主馬はこう云ったが、こんどはあまり自信のない声だった。

「つまり、なにかを知ろうとして、さぐりを入れてるんだろうが、少しうるさいから、いちおう出ることにするか」

「二の矢の来ないうちにね」

主馬は下へおりていった。

着替えをして、裏口から出るとき、庭の向うで笑う声がした。弓を射た(菱屋庄兵衛という)やつか、次高来太か、いずれにしても、こっちを嘲笑していることはたしかだった。主馬はちょっとふり返って、なにか云おうとしたが、そのまま外へ出た。

「海端がいい、涼みながら話そう」

空はまだ明るかったが、あたりはすっかり黄昏れて、夕凪ぎどきの湿気が、地面をむっと掩っていた。二人は水の見えるほうへ歩きだした。

執着

一

青山主馬が半之助を「丸茂」へつれていったときは、裏口から出入りをした。