轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
そこはセメントで自然の岩を模した洞窟のようであった。どこにあるのか、薄暗い電灯の光がその辺を照らしている。その光で見ると、黒い男の着ているのは、黒ビロードのシャツとズボン下であることがわかった。顔にも目隠しの黒ビロードのマスクをつけている。
洞窟の入り口のそばに岩の枝道があり、鉄のとびらがしまっていたが、男はそれをひらいて、中に案内した。そこは、やはりコンクリートの岩壁で囲まれた小べやで、簡素なデスクと長イスが二脚置いてあり、デスクの上には電話機と文房具がのっている。一方の岩壁には配電盤がとりつけられ、ずらっとスイッチが並んでいる。
ふたりはそこのイスにかけて、向かい合った。
「ここで取り引きをします。五十万円をお出しください」
覆面の男が、そっけない事務的な調子でいった。いわれるままに、札束を手渡して、さて、質問をしようとすると、相手はそれを止めるように手をあげて、
「いや、何をお尋ねになってもむだです。わしは門番です。門番はいっさいお答えしないことになっています。やがて、何もかもおわかりになるときが来るでしょう。サスペンスとスリルというやつですね。