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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
最後の売り物
死体のように動かなくなった。男の赤い姿は、その上に重なって倒れた。そして、二、三度立ち上がろうともがいたが、やはりぐったりとなって、かれも動かなくなってしまった。
ふたりの狂笑の余韻も消えて、死の沈黙がおとずれた。舞台照明は消えて、真のやみとなった。影男がよりかかっている巨女のからだも、もはや微動だもせず、あの暖かかった体温さえも急激に冷却し、死人のはだのように冷たくなっていった。
「お客さま、いかがでした」
やみの中から、男の声が聞こえてきた。
「これでおしまいではありません。もっともっと恐ろしい趣向が残っているのです。しかし、そのまえに、ちょっとお話がしたいのです。お客さまもお疲れでしょう。あちらのへやで、何か飲みものをさしあげながら、ゆっくりお話しいたしましょう。では、どうかこちらへ……」
影男は何者かに手をとられた。そして、相手の導くままに、人造女体の丘を踏みこえて、やみの中を、どことも知れず導かれていった。
最後の売り物
導かれたのは豪奢な地底の客間であった。近代様式の明るい洋室。家具調度のたぐいもアブストラクトふうの最新様式のものがそろえてあった。