轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
空飛ぶ夢
カウンターの老主人も、よごれたエプロンのボーイたちも、みんなこちらを見つめていた。
もと陸軍大尉のぼろ男が、ポトポト血のたれるガラスのかけらのハリネズミのような手で、顔をおさえて、ワーワーと子どものように泣いていたのだ。身もだえをして、はだしの足をバタバタやって、だだっ子のように泣きわめいていたのだ。
空飛ぶ夢
十二歳の大曾根さち子は、父も母もただ恐ろしい人であった。まだしも、夜ふけの酒場で花を売っているのが、いくらかしあわせなひとときであった。
彼女は客たちからいくらぶあいそうにされても平気だった。めそめそした哀れっぽい声は出さなかった。人間の愛情というものをまったく知らず、あまえることも知らなかったので、ただ機械的に、花束を持って、酔っぱらいの一団のうしろに立っているだけであった。しかし、このやせた小娘には、どこかうっとりと夢見ているようなところがあって、人の心をひいた。存外花を買ってくれる客があり、酔客が頭をなでてくれるようなことさえあった。だから、ほかの少女売り子たちに負けるわけでもなかった。
女親分のような年増女がいて、うわまえをはねたし、容赦なくひっぱたかれることもあった。