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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

壁紙の下

報酬なんかいらない。速水という男も、良斎が頼んだもうひとりの男も、非常に興味のある人物だから、進んで調べてみるというんだよ」

「それだけでだいじょうぶかしら?」

「ぼくが不安な顔をしているとね、明智さんは、絶えずあなたがたの身辺を見守っているから、わたしに任せておけばいい。少しも心配することはないと、請け合ってくれた」

ふたりはいちおうそれで満足しておくほかはなかった。警察に届けられないとすれば、これ以上の方法は考えられないからだ。

だが、そういううちにも、悪魔の触手はすでにしてこの可憐なる恋人たちの身辺に迫っていたのである。

壁紙の下

それから三日ほどは、なにごともなく過ぎ去った。ふたりは注意に注意をして、アパートにとじこもっていた。

四日めの午後、速水から電話がかかってきた。港区の麻布に、しろうと家の離れ座敷を見つけたから案内する。一時間もしたら自分の自動車が迎えに行くから、それに乗って来るように、自分は先方で待っている、というのであった。むろん、ふたりでいっしょに行くことにした。少しでも離ればなれになっているのは心細かったからだ。

やがて、キャデラックが表に着き、ひとりの運転手が速水の手紙を持って上がってきた。