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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
艶樹の森
これから、きみにおもしろいものをみせてやる」
影男は、やがてボックスを出ると、ニヤニヤ笑いながら、そんなことをいった。
ふたたび車は矢のように走りだした。国鉄の線路をこえて、青梅街道に出ると、影男が右、左とさしずをした。そして、止まったのは、高いコンクリートべいでかこまれた大きな屋敷の門前であった。電話で知らせてあったためか、車がとまると、アラベスクのすかし模様の鉄の門扉が、音もなくいっぱいにひらいた。車はその中へすべりこんでいった。すると、門扉は静かに、ふたたびとざされた。
艶樹の森
門内に車をとめて、三人が降りると、どこからか黒ビロードのシャツとズボンを着けた男が影のように浮き出してきて、影男と何かささやきかわしたかと思うと、そのまま先に立って、裏庭のほうへ回っていった。
そこには森のように木が茂っていた。そして、大きな池が黒く見える水をたたえていた。黒い男の手まねで、三人はその池の岸に立ちどまった。影男はこれから何が起こるかをよく知っていたけれども、須原と部下の運転手は、はじめてここに来たのだから、一種異様の不安を感じないではいられなかった。