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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
それと同じ物置きべやにあった古服なんかを持ってあのへやにはいった。そして、ふたりにズボンと、スカートと、くつをぬがせ、ぼくの用意しておいたのとはきかえさせて、逃がしたのだ。残ったふたりのズボンと、スカートと、くつで、古服なんかを芯に入れて、人間の下半身をこしらえた。それを、のぞき窓の下の壁ぎわにならべて置いた。真上の窓からのぞくと、壁ぎわの上半身は見えないから、ふたりが絶望して、壁にもたれて、足をなげ出していると信じてしまったのだ」
「ちくしょう! やりやがったな」
須原が、じだんだを踏むようにして、とんきょうな声をたてた。
影男は興味深くそれを傍観していた。すべてかれには初耳であった。昌吉と美与子が助けられたことをこのときはじめて知り、名探偵の手ぎわを、ヤンヤとほめてやりたいような気持ちだった。小男須原のろうばいは小気味がよかった。
それにしても、ここは名探偵と犯罪者の対決の場として、なんという異常な背景であったろう。うじゃうじゃとひしめく無数の肉体のまっただなかで、探偵理論が語られているのだ。凶悪殺人があばかれているのだ。
裸女たちは黒衣の警官隊の侵入におそれをなして、過半はもう木の幹からおりて、明智とふたりの犯人のまわりにむらがり立っていた。