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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

この場を逃げ出したい恐怖心よりも、彼女らの性格として、ふてぶてしい好奇心が勝ちを占めた。なにか見せ物でものぞくように、三人のまわりにむらがって、不思議な問答に聞き耳を立てていた。

明智は話しつづけた。

「すべては斎木の信用にかかっていた。きみは腹心の部下として斎木を信頼しきっていた。それがなければ、ぼくのトリックは成功しなかっただろう。きみの信用をさらに強めるために、ぼくはここにいる佐川君、それとも速水君かね、この人物を森の中で襲って、とりこにした。それから、自動車を運転して、東京のいたるところにあるきみの根城をまわりあるいた。だが、その根城のことごとくに、警察の見張りがついているといったのは、やっぱりぼくのトリックだった。あれはみんなうそなのだ。きみは斎木としてのぼくを信頼しきっていたので、そのうそを見やぶることができなかった。

なぜ、そんなうそをいったか。窮余の一策として、きみが佐川君の知恵を借りるのを待っていたのだ。佐川君がぼくたちをどこへ連れて行くか、それが知りたかったのだ。すると、こういうおもしろい地底の世界を見せてくれた。そして、ここでまた不思議な犯罪者を発見することができた。