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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
春木夫人がすばやくそれを受けとめて、
「お金のことでしょうか」
と、勘のよさを示した。
「さすがにお察しがいいですね。そのとおりです。縁もゆかりもないぼくが、これほど皆さんのために働くのには、何かわけがあるはずです。それはお金ですよ。ぼくは、実は、こういうことを商売にしているものです。人生の裏街道を歩きまわって、そこからお金もうけを捜し出し、ぼくの持っている知恵と技術を提供して、ぼろいもうけをするのがぼくの職業です。どろぼうのうわまえをはねるというやつですね。いや、失礼、つい口がすべりました。あなたがたのことじゃありません。いつもどろぼうや人殺しを上顧客にしているものですから、失礼なことをいってしまったのです。お許しください」
両夫人は、それを聞くと、薄気味わるくなってきた。女装怪人の美貌には引きつけられていたし、その腕まえには深く信頼していたけれども、どろぼうや人殺しのうわまえをはねる商売と聞いては、ゾッとしないではいられなかった。
「で、その金額は?」
春木夫人は虚勢を張って、さりげなく尋ねた。
「そうですね。これが男のお金持ちの場合だったら、千万とか二千万とかいうのですが、いくらお金持ちの夫人がたでも女ですからね。