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にっき

日記

宮本 百合子

16 一九三〇年(昭和五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 51,117 字 · 103 页

青空文庫

十一月一日

○イルクーツクで一時間時計が進んだ。

○車掌の室にサモワールがあり、変電機があり、車内備付品目録がはってある。「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へかえるとみんな調べを受けるんですか」「そうです。みんな検査する。この硝子がこわれたから十一留払わなけりゃならないんです。あなたの方は犯人がつかまってアクト〔書類〕をパスタービチ〔提起する〕したからいいんだけれども。」

○これで分った。食堂車へ渡る扉の硝子がおとといわれたとき、「どうしたんだろう、誰がわったの?」ときいた時フキゲンそうに「知らない」と云ってたわけだ。

十一月一日 土

チタを寝て居る間に通過した。一時間時計進む。0時五分すぎ、小さい木橋の上で列車が止った。

――何てステーション? ノボミールがきいてる。

――木のステーション!

又別の男の子が父親に同じ質問をしている。

――誰にも分らないステーションだよ。

軟床車の車軸が雪の下で折れて、もう少しで顛覆するところだったのだそうだ。この辺は雪が深い。日がキラキラさしているが雪は凍って寒い。緑色の制帽をかぶってやせた列車ナチャーリニク〔列車長〕が線路のところで一生懸命何か大きな金ものを叩いてる。