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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
一徹であるだけに、十兵衛は感動しやすい。殊に、自分が酒を嗜むだけに、酒好きな死者に、酒を手向けたという小娘らしい気もちが、ひどく欣しくひびいた。
「家はどこか」
「薬研堀でございます。あの薬師様の裏通りで、糸問屋の持長屋に住んでおりまする」
「お屋敷の往き帰りに――というたが、武家奉公か」
「榊原様のお奥へ、お針子に通っておりますので」
「親は、浪人者か」
「父親はもう……」
「うむ、病んだといったな」
「はい。死ぬ時、なぜか、侍の妻にはなるなと、遺言にいいましたが、わたくしは町人ぎらいで、やはりどうかして、武家の家内になりたいと、叔父、叔母にかくれて、お針部屋に御用のない時は、町の道場へ通うております」
「なぜ其女の父は、侍の妻になるなといって死んだのか」
「御主君の末路やら、自分の末路やら見て、そう考えたのでございましょう」
「さてはやはり、没収大名の家来だったか」
「わたくしは幼くて、よう存じませぬが、福島様の家中の端で、百石とか取っていた侍と聞いておりまする」
「今、身を寄せておる家は」
「叔母の家におります。けれど叔母は、世馴れた人で、これからの世間は、何んでも金を持たねばならぬ。