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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
五
彼の献策した計画では、余りに大き過ぎるというのである。――で、その計画を三分の一程度に縮小して、五所川原地方の一部の開墾役を任命するということになった。
「何があいつに」
「米喰い虫が、百姓の中に交じったら、百姓は嘆き限れまい」
一人娘のお珠をつれて、不毛の奥地へ出発した与右衛門の旅装の背へも、やはりそんな嘲笑のみしか送られなかった。
五
五所川原の宿場から一里ほど南の山――御月山の中腹に、彼は、小屋を作って住んだ。
治水工事を督励する開墾役所は、そこの麓に置いたが、そこさえ、低地であるため、遽雨となると水の危険があった。で、大事な図面や書類は、なるべく寝小屋のほうへ置くようにしていた。
「――広いなあ。この広い平地に、これだけ稲の種が実ったら!」
ここへ寝小屋を建てる時に、彼が一番に叫んだ言葉はそれだった。
だが、この高地からながめても、その広い天賦の平地も、まるで人間の静脈のように大小無数の河水が奔馳していて、人力の痕跡らしいものは殆ど見えないのである。
それからの彼は一人の下僕をつれ矢立と紙を持って、毎日、この荒蕪な平野を実地に踏査してみることだった。