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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

三

それまで門前を拝借してお待ちいたしておる」

門番では手に余った。表の侍部屋へ告げて、四、五人に来てもらった。そして今が、押問答に揉めているところだったのである。

そこへ帰って来た又十郎宗冬は、よい機に恵まれたように、門番も家来も、その騒ぎにかかっている隙を、ついと横から門内へ駈けこんだ。

眼ばやく見つけた綾部大機は、

「誰だ、今行ったのは」

と、後ろで怒鳴っていた。

立ち塞がっていた門番や家来たちは、初めて振向いて、

「御三男の宗冬様だ」

思わずいうと、大機は、

「何、今のが、三男の宗冬どのとか。――然らば宗冬どのに会おう。おてまえ方では、埒があかぬ。宗冬どのに一言、言伝てして引揚げてやる」

と、門内へ追おうとした。

「無礼な。どこへ行く」

「おのれ。どうしても、成敗を受けたいのか」

前の者が、大機の胸を衝く。また、左右から利き腕をつかむ。編笠を引きちぎる。――大機はなお、

「何。成敗する? ……よかろう、汝らの手で成敗できるものならいたしてみい。為り損じたら、この檜門が、おてまえ達の血で赤門になるぞ」

と、いいつのって去る気色がなかった。

三

家をあけて帰った朝は、父のみでなく、召使らに対しても、宗冬は間がわるかった。