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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

七

当然、津軽家の経済は、骨と皮ばかりになってしまった。城下の大町人からは、借上げられるだけ借りてしまい、町人といわず百姓といわず、関所さえなければ、みなこの餓鬼の領地から逃散するであろうと思われた。

藩では、江戸、京都、大坂あたりの商人からも、負債を求め、そして一半を急場に当て、一半は治水開墾事業のほうへ送った。

藩庁へ打合せのことがあって与右衛門が弘前の城下へ、出て来た折、与右衛門は、何者とも知れない武士から暗討ちをうけた。倖いに、危険はのがれて帰任したが、もうその頃から、

(あいつを殺してしまうのも、藩の御困窮を開く一つの途だ)

と云って激する者が出始めていたのであった。

七

(おれは能なしだ、米喰い虫にちがいなかった、せめてこのくらいな事を仕遂げねば)

と、与右衛門は、自然の暴威にも、人間の迫害にも屈しなかった。

また、つくづく思うには、

(幕府の御制度の中にある藩地である。藩の制度の下にある経済である。お上には、どんな御失費も滞渋ができぬように、下の者も、どんな事をしても、苛税に骨を削らなければならぬ。下ほどそれは辛くなる。出ないものを絞り出す苦悩なのだ。