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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
二
「水戸ですか」
と、田辺剣三郎の顔を見た。
「そうです。あんたも水戸の御出身で」
「いや、違います。拙者は、東京府士族の――」
と、断りながら、旗岡剛蔵という名刺をあわててさし出した。
二
黒羅紗の服が支給されて、秋風に海岸通りの夜が少し肌寒く覚えるころまで、旗岡巡査と田辺剣三郎刑事は、出張先の横浜にいた。
樫の棒を持って、旗岡巡査は、毎日毎晩居留地や海岸通りを、漠然とあるいていた。
まったく漠然と――であった。
警察屯所から命令されて来た犯人の顔を、直接見て知っているのは、田辺刑事だけで、横浜の警察屯所にも一人もいなかったからである。
茨城県の百姓の出で、しばらく大洗にもいたことのあるという博徒なのだ。それが、この開港場へ潜りこんで、盛んに内外人のあいだで詐欺賭博をやっているのであったが、出入りに巧妙な変装でもして歩くのか、首魁の当人をどうしても捕縛することができないので、田辺刑事が招致されたのであった。
けれど、本人の顔を見知っている田辺刑事にも、まだその男を突き止めることができなかった。
――背何尺何寸、筋骨脂肪質、足袋何文、顔うす黒い質、あばたあり、右の眉すこし薄し……などという緻密な人相書を授けられて、