轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

そのお人の姿が、やがて、小舟のうちに坐って、がくと、俯つ伏して見えたかと思うと、

「ああ――」

という嘆息が、敵の山からも、味方の山からも、思わず揚がって、湖の水までが、どうと岸辺にうごいて来た。

わしも、その一瞬ばかりは、後々まで、ひとみに深く焦きつけられて忘れることができなかった。

が――刻々にも、大きく動いている時の相は、わしのような者の詠嘆のために、いつまでも、同じ光景を呈してはおかない。

石井山の御本陣へ、宗治殿のお首が、抱えられて来たと思うと、殆どすぐだった。

「よしっ。堤を断れ」

猿殿のお声は、わしのいた辺りまで聞えて来た。

断乎たる命令の一下。堤は断られて、百八十八町歩に漲り湛えられていた水は、新しい大河を作って、凄まじい勢いを呈しながら氾濫し始めた。

同じ、御本陣を中心に――お味方の羽柴秀長殿の陣、蜂須賀彦右衛門殿の陣、福島正則殿の陣、浮田秀家殿の陣、黒田官兵衛殿の陣――そのほか旗差物のひらめく所、野といわず、山といわず、畑、林といわず、到る所から一斉に、引揚げの貝が鳴りひびいた。御本陣から吹きならす貝の音に応じて、各所の貝の音が答えつつ、全軍三万の兵は、堤を断った水脚のように、踵を回して動き始めたのであった。