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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
「お、兄上、おめずらしゅう」
と、後れて出た右門が、廊下の途中で迎えると、
「ウム、皆もおるか」
と、友矩はそのまま客書院へ通って、ずっと上座へ坐った。
「きょうは、御内意によって、他へお使いのついでに寄ったのじゃ。来月、浜書院で上様のお船遊びが催される。その折、兄弟どもも皆、誘えという御詫じゃ。――但馬守に伝えても遠慮するであろうゆえ、そちから申せと、わけても有難い仰せなのだ。――又十郎はおるか」
「おります」
「兄上十兵衛どのは」
「おられます」
「右の由を伝える程に、これへ呼んで貰いたいな」
家庭に帰って来ても、友矩は柳営の官僚くさいのが抜けなかった。右門には、そんな臭味は気にならない。唯々として呼びに行った。又十郎はすぐそこへやって来たが、長兄の十兵衛は、
「用事があるならわしの部屋へ来い」
という返辞であった。
「それは当然だ。怒らせさえしなければ、気のいい兄貴。ちょっと挨拶して来た方がよいでしょう」
又十郎は側から勧めた。友矩は、上様の内意だとか、何とか、理窟を云っていたが、結局、帰りがけに十兵衛の部屋へ出向いて、しかつめらしく、前と同じ意味のことを繰返して告げた。