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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

では、本当の品川四郎が、こんな嘘をついて、芳江をおびき出そうとしているのだろうか。行先は池袋だ。池袋と云えば例のラスト・マーダラアの跳梁した怪屋の所在地だ。この男はどうやら芳江をそこへ連込もうとしている様子であるが、まさか本物の品川がそんな真似をする筈はない。青木が池袋にいるなんて嘘を云う理由がない。では、ここにいる男は、幽霊男でもなく、本当の品川四郎でもないとすると、奇怪奇怪、又しても全然別な第三の品川四郎が出現したのであろうか。変な云い方だが、品川という男、一体幾つ身体を持っているのか。(だが、読者諸君、あんまり馬鹿馬鹿しいと怒ってはいけない。この謎はじきにあっけなく解けるのだから)

途中何のお話もなく、車は池袋のとある一軒家に着いた。案の定それは例の怪屋であったが、芳江はそれとも知らず、品川そっくりの男のうしろから、そのうちへ這入って行った。

「マア、妙なうちですこと。まるで空家の様じゃありませんか」

芳江は家具も何もない、ひどくほこりの溜った、広い板床の部屋を見廻して、不気味そうに尋ねた。

「青木はどこにいますの」

品川そっくりの男は、うしろ手に、ピチンと扉の鍵をかけて、ニヤニヤ笑いながら答えた。