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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

乞食令嬢

乞食はびっくりして聞き返す。

「エエ、そうよ。あたしね、子供の時分『乞食王子』って云うお伽噺を読んだことがあるのよ。それで思いついたのだわ。あのね……」

と何かボソボソと囁く。

「マア、勿体ない。そんなことが……」

乞食娘は、余りのことにボーッとしてしまって、辞退する言葉も知らぬ体に見えた。

アア、美禰子さんの、並みはずれた慈悲心が、飛んでもない悪戯を考え出してしまった。その結果、あんな大事件が起ろうなどとは、夢にも思わないで。

乞食令嬢

伯爵令嬢が奇抜ないたずらを思いついた。この乞食娘に自分の着物を着せ、自分は乞食のボロを身につけて、「乞食王子」という小説の真似をして見ようと云うのだ。美禰子さんの極端な慈悲心が、この哀れな乞食娘に一時でも伯爵の娘になった夢を見せてやり度いと思ったのだ。

二人は鏡の前で、お互の着物のとり換えっこをした。乞食娘は令嬢が態々持って来てくれた洗面器で汚れた手を洗い、顔にお化粧をした。

「お前、髪を短くしてもいいかえ」

乞食が肯くと、令嬢は髪の形まで自分のと寸分違わぬ断髪に切り縮めてやった。可成り手間取ったけれど、素人細工にしてはうまく出来上った。