轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
だが、わしは恥かしながら妻に惚れていたのじゃ。腹が減って痩せおとろえ、土まみれの経帷子の姿では、どうにも逢いたくなかったのだ。せめて湯にでも入って、髭でもあたって、日頃の大牟田子爵になって帰り度かったのだ。
わしは、そう心を極めると、もう一度墓穴に取って返し、例の海賊の財宝の中から、日本の紙幣を少しばかり抜き出して、それをふところに入れて、町の方へ歩き出した。
仕合せなことには、わしは町の入口で、一軒のみすぼらしい古着屋を発見した。
いきなり、ツカツカとその店へ入って行くと、薄暗い電燈の下で、コクリコクリ居眠りをやっていた老主人は、ハッと目を覚し、わしの異様な姿を見て、あっけにとられた体だ。
白木綿の経帷子は、襦袢だと云えば、それでも通る。わしは舟からおちて、着物を濡らして困っているのだと、妙な云い訳をして、古着を売ってくれる様に頼んだ。
海岸の古着屋には、そんな客が間々あるものと見え、相手はさまで怪しまず、一枚の古袷を出して呉れた。
「それはお困りでしょう。一時の間に合せなら、この辺の所で如何でしょう」
わしはその着物を見ると、情なくなった。
「なんぼ何でも、それじゃ、あんまり地味すぎるよ」