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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
秘仏の正体
すると、目の前の闇の中に、何かモヤモヤと蠢くものがある。闇の錯覚であろうか。イヤイヤ錯覚ではない。そのものは、徐々に、恐ろしい形を現わして来た。アレだ。例のものだ。
さし渡し三尺程もある二つの目が、闇の中にポッカリと浮上って、じっとこちらを見つめているのだ。しかもそれが、忘れようにも忘れ得ない、大牟田敏清の恨みに燃える両眼に相違ないのだ。
秘仏の正体
耳をすますと、どこからか、幽かに幽かに、異様な物音が聞えて来る。厚いコンクリートの壁の中で、巨人の目におびえた川村が、哀れなけだものの様に、狂い廻っている音だ。
わしは実物幻燈器械の、強い電燈の前で、もう一度両眼をカッと見開いて置いて、壁のスイッチを押した。つまり、川村の頭の上に下っている電燈を点じたのだ。同時に、三尺に拡大されたわしの目の幻影が消え去ったのは云うまでもない。
わしは黒眼鏡をかけると、廊下を一廻りして、内陣の正面に行って、そこの鉄扉に設けてある、小さな覗き穴の蓋をソッと開いて、内部の様子を窺った。
ハハハハハハハハ、わしの獲物は――川村義雄という一匹の鼠は、鼠とりの網の中で死物狂いにあばれ廻っていた。