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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

三つの棺桶

「瑠璃さん、怖いかね」

わしが囁き声で尋ねると、わしの妻は存外しっかりした調子で答えた。

「エエ、少しばかり。でも、こうしてあなたが手を握ってて下さるから、あたし心丈夫ですわ。それに、私達の宝物を見るんですもの」

「わしのすばらしい宝石を早く見せて上げ度いよ。お前どんなにびっくりするだろう」

「エエ、早く見たいわ。こんな淋しい恐ろしい場所に、宝物が隠してあるなんて、まるで何かの物語りみたいですわね」

「お待ち。今蝋燭をつけるから」

わしは燐寸をすって、用意の蝋燭に点火し、墓穴の中に置いてあった、例の古風な西洋燭台にそれを立てた。

三つの棺桶

「サア、わしの宝石箱は少々風変りだよ。これだ。この中をごらん」

蝋燭の赤茶けた光りに揺れて、暗闇の洞窟の床に、三つの大寝棺が並んでいた。無論墓穴の奥は深くて、十幾つの棺桶が安置してあるのだけれど、それは闇に隠れて見えず、ただ三つの寝棺丈けが、殊更そこへ引出し並べた様に、燭台の下にかたまっているのであった。

わしは、その棺の一つの蓋を持上げて、瑠璃子をさし招いた。瑠璃子は怖々薄暗い棺の中を覗き込んだ。

その棺というのは外でもない、例の海賊朱凌谿の贓品箱だ。