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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
瓶詰めの嬰児
わしはウットリと彼女に見入り、覚めながら夢見ていた。
お前はこれでも不満足なのか。仮令嘘にもせよ、これ程の女の愛情を買うことが出来るのだ。お前には使い尽せぬ財宝もある。その財宝とこの美女とを我がものとし、平和に余生を終る気にはなれないのか。
恨みというのか。恨みがなんだ。仮令一夜にしてお前の髪の毛を白くした程の恨みにもせよ。いずれ浮世の道化芝居の一幕に過ぎないではないか。
月光の魔力であったか、美女の魔力であったか、一刹那、わしは心弱くもそんなことを考えた。併し、先祖以来伝わった復讐心が、忽ちにして、束の間の夢心地を追い退けてしまった。「目には目を、歯には歯を」この外に真理はないのだ。
わしは所詮、地獄の底から這い出した、白髪の復讐鬼の外のものではなかった。
瓶詰めの嬰児
さて、愈々復讐劇の序幕を開く時が来た。ある日わしは次の様な招待状を発して、ホテルへ三人の客を集めた。
老生此度郊外にささやかなる別荘を買求め候については来る十五日別荘開きの小宴を催し度当日午後一時Sホテルまで御光来を得ば老生の喜び之に過ぎず候尚別荘へはホテルより自動車にて御同道申上ぐる予定に有之候。