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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
頼春の様子は俄然変わった。
青竹の杖をふりかぶり、一足ヌッと前へ出た。
「鬼火の姥というからには、この方にこそ怨みがある! ……この悲惨な境遇に、おとしいれた元兇こそ、あの悪婆じゃ、鬼火の姥じゃ! ……その眷族というからには、何んのおのれら許そうや! ……が、その前に訊くことがある、鬼火の姥、どこにおるぞ?」
変わった様子に驚きながらも、五人の者どもは口々に喚いた。
「沼辺にいるわい、眉輪の沼辺に」
「おのれら飛天夜叉の一党を、包囲した陣地にご安居じゃ」
「おっつけおのれの穢い首級も、姥の見参に入るというものじゃ」
「眉輪の沼辺?」
と首を傾げ、頼春は一瞬間考えたが、
「ではここは司馬の藪地か?」
「知れた話だ、何を云うか」
(そうだったか)と頼春は思った。(伏見街道を逸れたところに、司馬と称する大藪地があると、そういうことは聞いていたが、そこへ紛れ込んでいようとは! ……その大藪地の一所に、眉輪という周囲一里にも余る、大沼のあることも聞いていたが、そこに鬼火の姥がいる? ……よーし行って、逢って怨みを!)
彼が宮方を裏切ったのには、いろいろの事情があったけれど、資朝卿の別館の、無礼講の帰途深夜の町で、鬼火の姥に邂逅し、姥の不思議な魅力を持った言葉で、慫慂されたそのことが、潜在的に力あったことは、何んといっても争われ