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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「流れるわ流れるわ毒血が! 流れるわ流れるわ悪血が! ……頭から胸から腕を通して! ……快味! なぜだ、この快味は※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……人を斬った時の快味より、斬られた今のこの快味は! ……何故だ? 何故だ? 何故だ何故だ?」

落ちて行く躰を止めるものがあった。

三尺ばかりの石の祠であった。

勢いで右手が扉を破った。

指にふれる物がある。

引き出して夢中で傷口を抑えた。

一本の巻軸であった。

彼の左右、彼の頭上で、猿猴の群れが啼き叫んでいた。

見えていた浮藻が見えなくなった。

小次郎が四辺を見た。

洞窟の口がそこにあった。

「もしや?」

小次郎ははいって行った。

天井へまでもとどきそうな、巨大な釜がかかっていた。

それを載せている巨大な炉は、獅子のような口をあけていた。

そうしてその中で燃えている火は、血を含んででもいるように見え、そこから吹き出している墨のような煙りは、黒駒の靡かせる鬣のようであった。

釜の周囲には心臓や肝臓や、眼球や四足や耳やそういうものを切られたり刳られたりした、犬や狐や猯の死骸が、とりちらされたり積まれたりしてあった。