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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

御声に曇りが帯ばれて来られた。

「その後のなりゆきも心もとなく、無礼講ありと聞いたれば、そのありさまも見届けたく、今宵忍んで参ったのであるが、そちに逢い事情をつまびらかにし、心おちい安堵はしたが、……資朝!」

と御声が精気を帯ばれた。

「朝権恢復、平天下、万民和楽の大目的と、仏法における衆生済度と、何の異るところがあろう! ……この頃われしきりに思うぞ、如かず忍辱の袈裟を脱ぎ、無上菩提の数珠を捨て、腰に降魔の剣を佩き、手に大悲の弓矢を握ろうと! ……還俗して戦場に立ちたいのじゃ!」

「……………」

無言ではあったが手を上げて、資朝は抑止の形をした。

「方今天下の武士という武士、わずかの数をのぞきましては、他はおおよそ鎌倉幕府に、今に帰属しおりまする。朝家頼むは南都北嶺、爾余の僧衆にござりまする。かかる情勢の今日にあって、宮家御門跡にあられますること、いかばかりか力強くいかばかりか……」

「…………」

「なにとぞご自重! なるべくご韜晦! ……しかる後に獅子王檻を出で!」

「うむ」

「百獣を慴伏あそばしませ。……」

「うむ」

「宮!」

と資朝は仰ぎ見た。

「やがてご令旨四方に飛び、勤王の諸将雲のごとくに起こり……」