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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

と、行く手から腰元らしい姿の、若い女が二人来かかり、いぶかしそうに足を止めて、寄って来る白布を見寄った。

「…………」

「…………」

二人は声さえ立てられなかった。手を取り合い躰をもたれ合わせ、そのまま気絶して仆れてしまった。

この夜この城の一つの部屋に、土岐頼春が端座していた。

膝の上には巻軸が置いてある。

彼はどこからともなく聞こえて来る、嬰児の泣き声に耳を澄ましながら、心を滅入らせるのであった。

五人の野武士に誘われて、この城内へ来て以来、夜となく昼となくまれまれにではあるが、その嬰児の泣く声が聞こえた。

そうしてそれをあやすらしい、優しい細々とした女の声の、子守唄の声が聞こえることもあった。

泣きそ、な泣きそ

和子よ和子よ

と。……

頼春はその声を耳にするごとに、深い悲哀を感じるのであった。後悔に似た悲哀であり、郷愁に似た悲哀であり、過去に行なった罪悪を、霊魂によって責められている、と、そういったような悲哀でもあった。

「ああ今夜もまた聞こえる」

(この巻軸も不思議なものだ)

膝の上のその品をまさぐりながら、頼春はそう思った。

比叡山の裏山で、左の腕を斬り落とされ、谷の底へころがり落ちた時、偶然石の祠から、手に入れたところの品なのであるが、この品を手中に入れた時から、一匹の巨大な猿猴のような獣が、たえず自分