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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
もない! ……姥、頼む、ここから出してくれ! ……いや一緒にこの城から出よう! ……それにしても俺には不思議でならない、何んと思って鬼火の姥には、こんなところへやって来たのだ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「帰って来たのじゃ、この城へよ! ……時々この城へ帰って来て、住まねばならぬわしなのじゃ」
「では何んだ、姥の身分は? この城での姥の身分は?」
「やがて知れよう、じっとしていな。……とにかくこの城へさえ帰って来れば、鬼火の姥の力も業も、外にいる時より百層倍も強まる! ……範覚よ、安心していな。安心してわしに縋っていな」
この時巨大な真鍮の銅鑼でも、強い力で打ったらしい、陰気な金属性の音が聞こえ、それが長い尾を引いて、城の隅々へまで行き渡った。
「漢権守様のお出ましの時刻じゃ」
姥はユラリと立ち上がり、燭台の灯を吹き消した。
と、この部屋は暗黒となり、巨大な御幣のような姥の姿が、ぽっと灰白くその闇を分けて、戸口の方へ歩くのが見え、その扉のひらく音が聞こえた。
範覚だけが後に残っていた。
(漢権守様のお姿を、俺は一度も見たことがない。……見てはいけないと云われてはいるが、今夜は是非とも見たいものだ)