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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
担架の後からは盆を捧げた、道服を着た医師めいた男が、盆の上に整然と並べられている、小刀、小槌、小鋸、生皮剥ぎの薄刃物、生き眼刳りの小菱鉾、生爪剥がしの偃月形の錐、幾本かの針といったような物を、大切そうに見守って、厳粛の顔をして従いて来た。
「漢権守様のお通りじゃ、覗いてはならぬぞ、隙見してはならぬぞ」
と、そう警戒を与えるかのように、鈴の音は絶えず鳴り渡っていた。
その一行が進み進んで、一つの賓客部屋の前まで来た時、漢権守は足を止めた。
と、みんな足を止めた。
何か権守は囁いたようであった。
すると、警護の一人の武士が、その部屋の窓の前へ行き、まず拳で戸を叩き、それからその戸を外から開けた。
と、鉄格子のはまっている窓から、一つの男の顔が覗いた。
また、権守は何か囁いた。
すると、龕燈を持っていた僧が、担架の側へ歩みより、蔽いの布の片隅をかかげた。
眼を閉じ口を閉じた女の顔が、血紅色の龕燈の光に、瑪瑙のような色艶を帯びて、悲しそうに浮かび出た。
と、窓の顔が悲鳴するように叫んだ。
「浮藻だ! 浮藻だ! 浮藻ヨ――ッ」
女の眼が瞼をあけた。
「あッ、あッ、あッ、小次郎様ア――ッ」