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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「それに妹呉服ことも……」
「うむ、お仕えいたしているが……」
「…………」
「しかしだのう、しかしだのう……」
「…………」
「熊野の別当定遍殿が、こうも辛辣に敵対するからは……」
「…………」
「それにわが身の眼から見れば、宮方なんどまことに微力……」
「さようで」
と、弟の右源次は云った。
「承久以来幾度となく、朝権恢復を試みましたが、いつもほとんどひとたまりもなく、武家方によって粉砕されました」
「今回とてもその通りじゃ」
「そのとおりにござります」
「で、わしは思うのじゃ、父上や戸野の小父などと一緒に、宮方にご奉公いたそうものなら、数代つづいた竹原の家が、武家方によって滅ぼされようもしれぬと」
「わたくしにもそれが案じられまする」
「大塔宮様はわが家におわす」
「致そうと思えばどのようなことでも」
「うむ」
「それに……ともかくも致しますれば……車の庄はわが手に入ります」
「六千貫も手にはいる」
兄弟はここで沈黙した。
よしきりが群れて芒の中で、騒がしく啼き立て羽搏きしたが、一斉に立って晴れた空へ、碁石を蒔いたように散って見せ、すぐに一、二町はなれた野面へ、また一斉に落ち込んだ。