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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
戸野の大弥太の追い縋って来る、そういう様子も見えなかったので、宮家ご一行に追いつこうものと、金剛杖を小脇にかかえ、足を早めて歩いて来た。
と、行く手から十数人の武士が、何やら大声に話しながら、その中の一人が錦の御旗を担ぎ、こちらへ向かって歩いて来るのが見えた。
(はてな)
と、義光は足を止め、錦の御旗をつくづくと見た。
「卒爾ながらお訊ねいたす」
と、彦四郎は声をかけた。
「何んじゃ」
と、武士たちは足を止どめて、怪訝そうに彦四郎を見た。
「失礼ながら貴所方は、この郷の方々にござりまするかな?」
「芋ヶ瀬の荘司殿身内の者よ。……ここにおられるが荘司殿じゃ」
一人の武士がこう云いながら、錦の御旗を捧げ持っている武士の、左側に雄々しげの様子をし、髭食い反らしている中年の武士を、物々しく指さした。
「それにいたしても、その御旗は、錦の御旗と存じまするが」
と、彦四郎はいかにもいぶかしそうに訊いた。
すると得意気に胸を反らせながら、芋ヶ瀬の荘司が頷いて云った。
「そうじゃ、山伏、そのとおりじゃ、これこそ錦の御旗なのじゃ。……そちなど生涯見ようと望んでも、容易に見られぬ尊い御旗じゃ。