轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

で、暗い巷には、それらしい人影は見られなかった。

「小次郎」

と頼春は怪訝そうに云った。

「お前いま何んとか云ったか?」

「はい、兄上と申しました」

「そうではない、それ以外に……」

「いえ、なんとも申しません」

「お前に何か聞こえなかったか?」

「さあ、遠くで鶏の声が……」

「いやいや嗄れた女の声じゃ」

「聞こえませんでございますな」

「頼春殿、それがよろしいと……たしかに、このように聞こえたが……」

するとこの時同じ声が、どこからともなく聞こえて来た。

「武士は武家方へつくものじゃ、宮方へつくのはかえって不忠。……武家方に返り忠なさりませ」

「小次郎」

と頼春は顫えを帯びた声で云った。

「聞こえたであろう、あれじゃあれじゃ!」

「変ですなあ」

と小次郎は云った。

「私には何んにも聞こえませんが」

そう、小次郎には遥かの方角から、鶏の声が幽かに聞こえ、近くの小路で蔀を上げるらしい、軋り音が聞こえたばかりであって、そんな嗄れた女の声など、全然聞こえては来ないのであった。

「そうか」

と頼春は腑に落ちないように云った。

「ではわしの空耳かもしれぬ。……行こう」

と二人は歩き出した。