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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「わ、わ、わ、わ、わーッ」
斗のような血!
「助けて――ッ」
と悲鳴し姥の手から遁がれ、土間へ駈け下りた浮藻の体を、強く抱きしめた腕があった。
「浮藻殿オ――ッ」
「コ、小次郎様ア――ッ」
浮藻を抱いて立っている、小次郎の背後にいる者は、鉞を投げて姥の体を、胴から二つに切り割った右衛門と、幽霊女と鶏娘と、そうしてそれらの人々を、速い足で探しあて、失った通力を取戻そうとして、吉野大峰のどこにか、難行苦行をしていると、噂に聞いた桂子のもとへ、連れて行こうと旅をして来、道々浮藻をも探し求め、ここへ来て道に踏み迷い、高燈籠の燈につられ、入り込んで来た風見の袈裟太郎――それらの人々が立っていた。
尊い犠牲
罠から助けた範覚をして、――漢権守そのものでもあり、鬼火の姥でもある姥の死骸を丁寧に埋葬させた後、小次郎や浮藻の一行は、姥の墓と範覚とに別れを告げ、桂子のいるという大峰の方へ、その翌日旅立って行った。
同じ月の二十二日、相州鎌倉は大騒動であった。
滅ぼされた北条高時の遺子、北条次郎時行が、諏訪頼重父子に奉ぜられ、信濃において兵をあげ、鎌倉へ攻めのぼって来たからである。