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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

(痩せた)

と頼春には思われた。

それが痛々しくてならなかった。

(俺にもしものことがあったら、この女はどうなるだろう)

寡婦! ……美貌! ……うら若い身の上! ……自分の妻となる前に、幾人、いやいや幾十人、この女を射落とそうと、六波羅武士や北面の武士が、狙い、口説き、誘惑したことか! ……では独身となったと知ると、同じような種類の若武士どもが、手を変え品を変え立ち代わり入り代わり!

(たまらない事だ! たまらない事だ!)

頼春の血は煮え返った。

(人手に渡してたまるものか!)

「早瀬!」

と思わず情の逼った声で、頼春は云って身をのり出した。

「…………」

その烈しい愛情の声に、早瀬の体は引かれたかのように、庭から部屋へ駈け上がった。

「あなた!」

「うむ」

「お心割って……」

「…………」

早瀬の手は良人の膝へかかり、その眼は良人の眼へ食い入った。

――が、頼春は首をふった。

首を振った頼春ではあったけれど、その夜妻との添い臥しの床で、未練の言葉をふともらした。

「一樹の蔭に共にやどり、一河の流れを共に汲む、それさえ多生の縁だという、まして相馴れて三年となる、等閑でないわしの心、折りにふれ物につけ、お前も知ってくれたと思うよ。