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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
とまた、忽ち猿の如く甲板に攀じのぼってきては、同じ芸当を繰返すのでした。その中に、ぼくは片足の琉球人城間某という、赤銅色の逞しい三十男を発見し、彼の生活力の豊富さに愕いたものです。
然し、外出から帰ってみると、甲板には、もう土人達は一人もいず、その代りに第二世のお嬢さんたちが、花やかに着飾って、まだ、あまり帰っていない選手達を取り巻いていました。
真面目でもあるし、殊にフェミニストの坂本さんが、やはり、五六人のお嬢さん達に取り囲まれていましたが、ぼくの姿をみるなり「ああ坂本君」と呼んで「この人もボオトの選手です。大きいでしょう」とか、紹介しておいて、自分は歓迎に来ている県人会の人達のほうへ行ってしまいました。ぼくは周囲の女性達をみるなり、坂本さんが、ぼくに委して、立ち去ったのが、すぐ諒解できました。美醜はとわず、とにかく、その頃の言葉で、心臓の強いお嬢さん達でした。
いずれも二十歳前後の娘さんとみえますが、なかに一人、豊かに肥えた肩をむきだした洋装の、だぼ沙魚みたいなお嬢さんが、リイダア格で、「サインして下さいよう」とサイン帳をつきだすと、あとは我も我もと、キャアキャア手帳をつきつけます。