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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

初枝「私、お先きに……」

清子「あら、困るわ、先きに帰られちゃ」

初枝を止める。

十吉「尾行する積りはなかったんだが、学校へ行ってみたら、今お帰りになったというんで、慌てゝ後を……。実は、あんたの今の話で、一寸聞いて置きたい事があってね」

清子「あなたには相談しないわ」

十吉「じゃ、誰に相談するんです」

清子「私は天に相談するわ」

十吉「天? 天は雨を降らすだけだ」

というと、突然、雨が降りだして来る。

初枝「あら、本当だわ、降って来たわ」

三人塀のかげへ雨を避ける。

清子「あなたに会うと、例外なしに雨が降るのね」

十吉だまって、持っていた蝙蝠傘を渡して雨の中を濡れて去る。寂しい後ろ姿。清子、その傘をひろげる。初枝その中へはいる。

初枝(見送って)「あの方、どうしてあんな髭なんか生やしてるのでしょう、お兄様のお友達だから、まだ二十代なんでしょう?」

清子「兄が南方で戦死して、あたし一人ぽっちになったでしょう、それでもって私のこと心配して、あなたは天涯孤独だからといって、慰めたり励ましたりして下さるんだけど……。あの人の顔見るとかえってこっちが悲しくなるわ。だから、顔見るときつく当りたくなるの。