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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

葉子、父親がはいって来たので、慌てゝレコードをとめる。

鶴三「お前ひとりか、中瀬古さんは……?」

葉子「まだ来やはれへんわ」

鶴三「中瀬古さんの診立て通り、おれの身体はまだ働けるぞ」

葉子「中瀬古さん、遅いなア、まだ走ったはんのやろか」

この時、庄平入って来る。巻脚絆姿。葉子そわそわする。

鶴三「やあ、待ってました、マラソンは……?」

庄平、賞品を出して、

庄平「これ、貰いました」

葉子「あら、一等……」

庄平「あなたにあげますよ、それ」

葉子「おおけに」

庄平(ポケットから薬を出して、鶴三に渡す)「あなたにはこれ、約束の薬です。気休めに服んでみて下さい」

鶴三「こりゃ、どうも」(押し戴く)

庄平「あ、しまった」

鶴三「どうかしましたか」

庄平(デス・マスクを指して)「南方土産の面を持って来てあげようと思って、うっかり忘れていた、明日持って来てあげましょう」

葉子「明日も来てくれはりますの」(嬉しそう)

鶴三「葉子、お茶をいれて来な」

葉子、去る。蜂谷十吉のそっと入って来る。

鶴三「おや、いらっしゃい」

庄平、十吉の方を見て、そのまゝ視線を動かさない。

庄平「蜂谷君じゃないか」

十吉「じゃ、やっぱし中瀬古君か」