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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
さえ共にせんと誓いたりし同志中、特に徳義深しと聞えたるある人に面会し、一部始終を語りて、その斡旋を求めけるに、さても人の心の頼めがたさよ、彼曰く既に心変りのしたる者を、如何に説けばとて、責むればとて、詮もなからん。むしろ早く思い棄てて更に良縁を求むるこそ良けれ、世間自ずから有為の男子に乏しからざるを、彼一人のために齷齪する事の愚かしさよと、思いも寄らぬ勧告の腹立たしく、さては君も今代議士の栄職を荷いたれば、最初の志望は棄てて、かつて政敵たりし政府の権門家に屈従するにこそ、世間自ずから栄達の道に乏しからざるを、大義のために齷齪することの愚かしさよとや悟り給うらん。アア堂々たる男子も一旦志を得れば、その難有味の忘れがたくて如何なる屈辱をも甘んぜんとす、さりとては褻らわしの人の心やと、当面りに言い罵り、その醜悪を極めけれども、彼重井の変心を機として妾を誑惑さんの下心あるが如くなお落ち着き払いて、この熱罵をば微笑もて受け流しつつ、その後も数訪い寄りては、かにかくと甘き辞を弄し、また家人にも取り入りてそが歓心を得んと勉めたる心の内、よく見え透きて、憫れにもまた可笑しかりし。