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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

八 暁夢を破る

実にさなりと思いければ、余儀なくもその言葉に従い、また幾日をか過ぎぬるある日、鉛筆もてそこはかと認めたる一封の書は来りぬ。見れば怨めしくも恋しかりし女史よりの手紙なり。冒頭に「アアしくじったり誤りたり取餅桶に陥りたり今日はもはや曩日の富井にあらず妹は一死以て君に謝せずんばあらず今日の悲境は筆紙の能く尽す処にあらずただただ二階の一隅に推しこめられて日々なす事もなく恋しき東の空を眺め悲哀に胸を焦すのみ余は記する能わず幸いに諒せよ」とあり。言は簡なれども、事情の大方は推せられつ。さて何とか救済の道もがなと千々に心を砕きけれども、その術なし。さらば己れ女史の代りをも兼ねて、二倍の働きをなし、この本意を貫かんのみとて、あたかも郷里より慕い来りける門弟のありしを対手として日々髪結洗濯の業をいそしみ、僅かに糊口を凌ぎつつ、有志の間に運動して大いにそが信用を得たりき。

八 暁夢を破る

しかるにその年の九月初旬妾が一室を借り受けたる家の主人は、朝未明に二階下より妾を呼びて、景山さん景山さんといと慌ただし。暁の夢のいまだ覚めやらぬほどなりければ、何事ぞと半ばは現の中に問い反せしに、女のお客さんがありますという。