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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

二 鞄の爆発物

明治十八年の十月なり。

二 鞄の爆発物

同伴者は新井章吾、稲垣示の両氏なりしが、壮士連の中には、三々五々赤毛布にくるまりつつ船中に寝転ぶ者あるを見たりき。同伴者は皆互いに見知らぬ風を装えるなり、その退屈さと心配さとはなかなか筆紙に尽しがたし。妾がこの行に加わりしは、爆発物の運搬に際し、婦人の携帯品として、他の注目を避くることに決したるより、乃ち妾をして携帯の任に当らしめたるなり。かくて妾は爆発物の原料たる薬品悉皆を磯山の手より受け取り、支那鞄に入れて普通の手荷物の如くに装い、始終傍らに置きて、ある時はこれを枕に、仮寝の夢を貪りたりしが、やがて大阪に着しければ、安藤久次郎氏の宅にて同志の人を呼び窃かに包み替えんとするほどに、金硫黄という薬の少し湿りたるを発見せしかば、鑵より取り出して、暫し乾さんとせしに、空気に触るるや否や、一面に青き火となり、今や大事に至らんとせしを、安藤氏来りて、直ちに消し止めたり、遉がは多年薬剤を研究し薬剤師の免状を得て、その当時薬舗を営み居たる甲斐ありと人々皆氏を称讃したりき。さりながら今より思い合わすれば、如何に盲目蛇物に怖じずとはいいながら、かかる危険極まれる薬品を枕にして能くも安々と睡り得しことよと、身の毛を逆竪つばかりなり。