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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
十一 発覚拘引
、妾の帰れるを見て、共に晩餐を喫しつつ、午刻のほどより丸山に赴ける稲垣の今に至りてなお帰らず、彼は一行の渡航費を持ちて行きたるなれば、その帰るまではわれら一歩も他に移す能わず、特に差し当りて佐賀に至り、江藤新作氏に面したき要件の出来たるに、早く帰宿してくれずやという。その夜十時頃までも稲垣は帰り来らず、もはや詮方なしとて、それぞれ臥床に入りしが、妾は渡韓の期も、既に今明日に迫りたり、いざさらば今回の拳につきて、決心の事情を葉石に申し送り、遺憾の念なき旨を表し置かんと、独り燈下に細書を認め、ようよう十二時頃書き終りて、今や寝に就かんとするほど、稲垣は帰り来りぬ。
十一 発覚拘引
古井は直ちに起きて佐賀へ出立の用意を急ぎ、真夜中宿を立ち出でたり。残るは稲垣と妾とのみ、稲垣は遊び疲れの出でたればにや、横になるより快く睡りけるが、妾は一度渡韓せば、生きて再び故国の土を踏むべきに非ず、彼ら同志にして、果して遊廓に遊ばんほどの余資あらば、これをば借りて、途すがら郷里に立ち寄り、切めては父母兄弟に余所ながらの暇乞いもなすべかりしになど、様々の思いに耽りて、睡るとにはあらぬ現心に、何か騒がしき物音を感じぬ。