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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

緑色の高級車

「それが何よりフシギだね。ボクにもそれが頭にからみついて放れないが、あの女をとっちめてやるには、この事件にまきこまれてみるより仕様がないからね」

「第一だね。ふだん留守がちの別荘にそんな国宝的な秘密の品をおくのはおかしいね。ボクの推理によれば、これには深刻なるカラクリが隠されてるね」

タコスケがまた名タンテイのウンチクをかたむけてみせた。

「だからさ。ボクの意見としては、夏川さんが女に仕返しするんだったら、白雲荘を監視する方が近道らしいや」

「ま、いいさ。まかしておきたまえ。ボクに爆破させるのが誰の金庫でどんな品物だか、それを見とどけるのが何よりの近道だよ」

左近はギリギリのことを考えているのである。海の男にこう落付かれてはどうにもならない。二人がとめるのもきかず、タコスケの臨時の宿直を願って左近は八時に約束の場所へでかけてしまったのである。

緑色の高級車

午後七時四十五分。銀座裏の飲食店街にある中華料理芳々亭の隅のテーブルにただ一人、今しもワンタンメンを食べ終ったのは西江葉子であった。ここが午後八時左近のいわゆる都内某所に於ける千葉ウジとの会見場所だ。