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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

「いや、恐れいりました。それです、それです。先方を主人公にして、先方の好奇心に訴える。一つ一つの細かい手法はいろいろですが、帰するところはそれでございますよ。女優とか芸能人は、いくら有名なかたでも、わけはありません。有名なかたほど好奇心が強いものですからね。ぐっと上流の家庭の奥さまでも、箱入りのお嬢さまでも、好奇心の強いかたは、なんとでも手段があります。苦手は好奇心の乏しいおかたです。そういうおかたは、この地底世界へおつれすることさえむずかしい。これにはまた、まったく別の手段がいるのですが」

「その場合は、お客の男のほうに細工をする」

「エッ、なんとおっしゃいました?」

「たぶんそうだろうと思ったのです。ぼくならぼくをですね、その女の人のご主人なり、恋人なりに化けさせる」

「いや、驚きました。あなたさまはほんとうにわたくしの親友です。カムレードです。さあ、もう一度お手を、お手を」

ちょびひげの柔らかい手が、ギュッと握りしめてきた。豊満な女の手であった。かれはそのまましゃべりはじめる。

「こういう例がございました。ある老年の高位高官のおかたが、ご自分の年の三分の一の若い美しいお嬢さまと再婚なさったことがあります。